ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜


俺の後ろで、恵里奈が息を飲んだのがわかった。


「は…?じゃあ何?恵里奈が辛い思いしても良いってことかよ⁉︎自分の欲のためなら恵里奈がどんな思いしても構わないのか⁉︎」

「違う。そうじゃない」

「そうじゃないって…あんたは恵里奈を幸せに出来んのか⁉︎」


語尾を強めて、俺に食ってかかる勢いの健に、ふっ、と笑いが零れる。

愚問だな、誰に聞いてんだよ。


「恵里奈を幸せに出来んのは、俺しかいねぇんだよ」


30年も生きてきて初めてだった。
こんなにも愛おしくて、離れてる時間が堪らなく寂しいと思うこと。

誰にも渡したくない、誰の目にも触れない所に閉じ込めておきたい、という独占欲。

過去に一度、結婚を考えた京子にさえ感じなかった感情。


俺が本気になったら、誰にも負けるはずがない。

恵里奈を世界で一番幸せに出来るのは、間違いなくこの俺だ。


「ふふ。健、もういいじゃない。その辺にしたら?」


今まで黙って見ていたお母さんが、柔らかく微笑みながら口を挟んだ。

その言葉に、何か引っかかるものを感じる。
娘と仲が良いからといって、健に対して妙に馴れ馴れしいような気がするのは気のせいだろうか。


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