ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
『もういいから帰れよ』
ハルの荷物を持って玄関に追いやる。
『ちょっ、ちょっと』
『開店のためにやることはちゃんとやるからそれでいいだろ。暫く放っといてくれ』
荷物を押し付けてハルを外に出すと、ドアを閉めた。
ドアに額を付け、息を吐く。
おれって、まじ最低だな…
心配してくれる親友を追い出して、放っておいてくれだなんて。
たった一人の女の存在に、ここまで左右されるとは。
自分の弱りように笑えてくる。
ややして、カツカツとハルの足音が遠ざかっていくのが聞こえた。
リビングに戻り、煙草に火をつける。
さっき届いたサナエのメールを開くと、簡単に返信を打った。
そういや、サナエってどんな顔してただろうか。
体格も髪型も声も全然思い出せない。
だけど、何処と無く京子に似ていたような気がする。
俺の頭の中に浮かんでくるのは、京子が見せた最初で最後の涙。
『いなくなってわかるなんてな…』
京子が旅立ってから数日間は何ともなかった。
寂しさはあったけど応援したい気持ちの方が強かったし、俺自身、あいつに負けたくないという一心で仕事に集中してきた。