ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
「文化祭の手伝いの話をされた時、チャンスだと思った。恵里奈の学校だって知ってたからな。まさか賢也と同じクラスだとは思わなかったけど」
初めて学校に行った日、昼休みで騒ついてる中、すぐに恵里奈を見つけた。
顔を真っ赤にして電話する姿にイラッとしたけど、それ以上に苦しくもなったのを覚えてる。
30にもなって、高校生のような見てるだけの片想い。
あの笑顔を俺に…俺だけに向けてほしい。
そんなある日。
仕事を終え最寄り駅を歩いていると、駅前広場の端で背中を丸めてベンチに座る恵里奈を見つけた。
声を掛けようと近付くと、その足をピタッと止める。
近くの植木に寄り掛かり、夜空を見上げた。
グスッグスッと、恵里奈の鼻を啜る音が聞こえる。
好きな女が泣いてるのに、隠れて見届けることしか出来ない自分が無力で腹立たしい。
あの震える肩を抱き締めてやることも、涙を拭ってやることも出来ない。
それは、俺の役目じゃない。
今は。