ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜


恵里奈は俺の方を見ず、黒い海を真っ直ぐに見据えている。


「全然、無駄なんかじゃないですよ。夢を叶えるために必死になって働いて、念願のカフェをオープンさせた。その時に築いた絆は今も残ってるじゃないですか。ハルさんもそうですけど、前働いてた店の店長や従業員さんとは今も付き合いあるんですよね?」


確かに、恋愛面では残ったものなんてないけど、仲間や仕事面で得たものは大きい。

前の店の店長には本当にお世話になって、カフェのオープンの為に援助もしてくれたし。
新商品の考案で悩んだ時は、よく相談に乗ってもらってる。

赤の他人に資金援助するなんて、なかなか難しいことだろう。
信頼が成り立っていなければ出来ることじゃない。

あの人がいなければ、もしかしたらカフェオープンの夢はまだ叶っていないかもしれない。


恵里奈は「それに」と言葉を続けると、ちらっと俺に目を向けて恥ずかしそうに微笑んだ。


「準備期間だったんですよ。私と並木さんがこうして一緒にいるようになる為の」


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