ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
もう俺は必要なさそうだな。
伝票を持って席を立つ。
「剛…」
「一つ言っておく。年の差なんて関係ない。要は気持ちだろ?俺は、彼なら信じてもいいと思うぜ」
じゃあな、と手を上げてレジへ向かう。
伝票をレジに出すと、後ろのドアが勢いよく開いた。
「キョウコ!」
「っっ、ルイ!」
ざわっ、と騒つく店内。
俺はレジを済ませると、二人を横目に店を後にした。
相変わらず人で賑わうメインストリートを抜け、路地に入る。
途端に広がる静けさ。
さっきまでの雑音が、遠くの方で聞こえる。
別の世界へ足を踏み込んだようなこの感覚が好きで、ここの物件を選んだ。
俺とハルが理想とするカフェに合った最高の立地で、メインストリートに比べて客足は少ないかもしれないけど。
現実世界から少し抜け出して疲れた心を癒す、そんな空間を演出したかった俺達はこの路地と赤い屋根の物件を見て即決だった。