ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
さっき横目に見た光景を思い出す。
涙を流しながら首に腕を回す京子と、彼女を受け止める細いけど広い背中。
あの二人は大丈夫だろう。
絶対に幸せになれる。
俺が席を立つ前、窓の外に見えたルイという彼の姿は、事情を知らない奴からしたら変な外人だと思うだろう。
でも、俺には凄くカッコよく見えた。
周りの目なんか気にせず、髪と服を乱し、こんな寒い時期に大量の汗を流す。
手には大きなバラの花束。
遠いパリからここまで愛する女を追いかけて来た。
彼ならきっと、京子を幸せにするだろう。
本物の大きな愛で包み込むことだろう。
路地を抜けると、太陽の日差しが眩しくて思わず目を細めた。
「並木さん」
途端に聞こえた優しい声。
「恵里奈」
幸せそうにとびっきりの笑顔で手を振る彼女が堪らなく愛おしい。
「来ちゃいました。迷惑、でしたか?」
「言ったろ?全然迷惑じゃねぇよ」
恵里奈の耳に口を寄せると、むしろ嬉しい、と囁く。
ボッと耳まで赤くする恵里奈に、くっくっと笑みが溢れてしまう。