ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
「その時はさ、ずっと手繋いでような」
そう言って微笑む先輩が愛しくて、先輩の首に腕を回して抱きついた。
自分でも大胆な行動だと思う。
だけど、幸せな気持ちが爆発して自分を止められなかった。
先輩は、はは、と笑いながら、「甘えん坊だな」と抱き締め返してくれた。
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「で?何してたの?」
部活が終わり部室で着替えていると、瀬奈が周りを気にしながら耳打ちしてきた。
「何って?」
「片付けの時よ!石川先輩と二人で椅子返しに行ったのはいいけど、なかなか帰って来なかったじゃない。何かあったんでしょ?」
「まさか!何もないよ。ただ倉庫に立て掛けてある他の折り畳み椅子が倒れてたから、それを直しながら片付けて遅くなっただけ」
「ホントに?」
「本当だって」
遅くなったのは遠回りをしたからだけど、椅子が倒れてたっていうのも嘘じゃない。
数脚だけど倒れてたのは確かで、そこにサッカー部顧問がたまたま来て直してってくれと頼まれた。