ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜


カフェはまだ混み始める前の時間帯らしく、ゆったりとした時間が流れている。


「来ないな…先輩…」


壁に掛けられた時計は10時半を指している。


待ち合わせは10時。

もしかして、今日もまた…


そんな不安が押し寄せて来て、ズキッと胸が痛んだ。


わかってる。

私は彼女じゃないから…


わかってるけど、約束をしてから先輩が来るまでこの痛みは消えることはない。


はぁ、と何度目かのため息を吐いた時、


「お客様、ご気分でも悪いですか?」


心配そうな声が頭上から聞こえた。

顔を上げると、【副店長 並木】と書かれた名札を胸元につけた店員が、眉を顰めて私を見下ろしていた。


「…いえ」

「そうですか。では、お口に合いませんでしたか?」


そう言って、まだ一口しか進んでいないパンケーキに視線を移す店員に「そんなことないです!」と即答した。


< 6 / 284 >

この作品をシェア

pagetop