ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
カフェはまだ混み始める前の時間帯らしく、ゆったりとした時間が流れている。
「来ないな…先輩…」
壁に掛けられた時計は10時半を指している。
待ち合わせは10時。
もしかして、今日もまた…
そんな不安が押し寄せて来て、ズキッと胸が痛んだ。
わかってる。
私は彼女じゃないから…
わかってるけど、約束をしてから先輩が来るまでこの痛みは消えることはない。
はぁ、と何度目かのため息を吐いた時、
「お客様、ご気分でも悪いですか?」
心配そうな声が頭上から聞こえた。
顔を上げると、【副店長 並木】と書かれた名札を胸元につけた店員が、眉を顰めて私を見下ろしていた。
「…いえ」
「そうですか。では、お口に合いませんでしたか?」
そう言って、まだ一口しか進んでいないパンケーキに視線を移す店員に「そんなことないです!」と即答した。