ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
「ったく、ハルはさっさと今日の分締めて早く帰れ」
並木さんがシッシッと手を払うと、店長さんは不貞腐れた様子で「わかったわよ」と私から離れた。
そして、【スタッフオンリー】のドアノブに手を掛けると、私を振り返り、
「そうだ!もし剛に何か変な事されたら、すぐ叫ぶのよ?」
そう言って、じゃあね、と手を振って中に入って行った。
バタンとドアが閉まると、無意識にため息が漏れる。
店長さんって、まるで嵐のような人だな…
悪い人ではないんだけど、今のでどっと疲れた気がする。
「悪かったな」
「いえ…」
「…とりあえず、そこ座ってて」
並木さんはカウンター席を指差すと、再びキッチンに戻って行った。
ホールに一人残されて、改めて今の状況を思い出す。
さっき店長さんが「帰ったんじゃなかったの?」って言ってたけど。
なんで並木さんは私をここに連れて来たんだろう。
全くつかめない並木さんの行動に首を傾げつつも、言われた通りカウンター席に座って待つことにした。