ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
「何だよ。気持ち悪ぃな」
「気持ち悪いって、ホント失礼ですねっ!私だってお世話になったりしたらお礼ぐらい言いますよ」
「ふーん。お世話ね…俺は別に世話してやったつもりはないけど、まぁいい。今回はそういうことにしといてやるよ」
ニヤッと口の端を上げて言った後、並木さんは駐輪場の方へ歩き始めた。
しかし、今のは一体どういうことだろう。
世話やいたんじゃないなら、昨日の行動の本当の意味は何?
「お前、ここが地元なんだろ?チャリ?」
振り返って言った並木さんに、顔を横に振った。
私の家は駅から歩いて10分程度。
朝はいつも同じ時間に出る父親に車で送ってもらってるから、帰りは必然的に歩いて帰っている。
「じゃあ乗ってけ」
恐らくバイクの鍵だと思う。
並木さんは、そのキーホルダーを人差し指でくるっと一回まわして手の中に収めた。
「大丈夫ですよ。家、近くなんで」
「いいから。女を一人で帰すほど、俺は冷たくない」