ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
「ハァハァハァ…っ…」
壁に凭れ、乱れた息を整える。
無我夢中で走って、着いた先は屋上の扉の前。
扉は鍵がかかって開かなかった。
先輩が彼女と二人でいる所を初めて見た。
あんな優しい眼差しを向けるんだ。
あんな風に意地悪に笑ったりするんだ。
ぴったりくっつく二人は、正に相思相愛で。
私が入る隙間なんてこれっぽっちもなかった。
それに、彼女の美緒さんは本当に可愛らしい女性だった。
顔やスタイルが特別良いわけじゃない。
顔で言うなら瀬奈の方が数倍可愛いし、スタイルはどちらかというとぽっちゃりしている。
だけど、雰囲気がほんわか優しくて、声も笑顔も、全てが癒し系の美緒さん。
そんな彼女に激しく嫉妬を覚えた。
私は、彼女には勝てない。
敗北を、絶望を、強く感じた。
「また泣いてんのか?」
パタパタとスリッパの足音を鳴らしながら階段を昇って来る並木さんが、溜め息交じりに言った。
今も止まらない涙を腕でゴシゴシと大雑把に拭う。