ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
「べ、別に泣いてませんっ」
「泣いてんだろ」
「泣いて…ません…」
並木さんは、扉を背に座り込んだ私の隣りに立つと、ふぅ、っと息を吐いた。
「で?」
「でって?」
「…話してみれば?」
それって…
黒いモヤモヤが渦巻く私の心中を聞いてくれるってことだろうか。
確かに誰かに聞いてほしい気持ちもある。
だけど、なんで並木さんがそんなことまでしてくれるの?
そもそもどうしてここにいるの?
私を追い掛けて来てくれたの?
並木さんの真意がわからなくて、そっと彼を盗み見る。
並木さんはポケットから煙草を取り出すと、ここは学校で吸えないと気付いたのか、チッ、と舌打ちをしてそれをまたポケットにしまった。
「…何だよ」
「あ…いや……何でもナイデス」
やっぱりよくわからない。
並木さんは優しい。
優しいけど、基本面倒臭がりで他人のことにあんま興味ない並木さんが、私なんかの話をわざわざ追い掛けてまで聞いてくれるなんて。