ふわ恋。〜一番の恋を貴方と〜
「こんな話してすみません。私そろそろーー」
私が重い体に力を入れて立ち上がると、
「お前は馬鹿か」
並木さんは、呆れた声で言った。
「ば、馬鹿…?」
思いもよらない言葉に、思いっきり振り返るとぶつかる視線。
それは“睨んでる”とはまた違う、力強い眼差しで。
ドクドクと心臓が音を立て始める。
ひどい…
並木さんは、馬鹿にしないって思ってたのに。
親身になって話を聞いてくれるって思ってたのに。
「そんな言い方、ひどいです」
唇を噛み締めて、壁に凭れたまま腕を組んでる並木さんを睨みつける。
だけど、並木さんは眉一つ動かさず、それどころか、はぁ、と盛大な溜め息を吐いた。
「馬鹿に馬鹿って言って何が悪い」
「っっ」
「お前がしてることはな、ただの恋愛ごっこだよ」
「恋愛、ごっこ…?」
「自分を悲劇のヒロインに仕立て上げて、その世界に酔ってるだけだ」
「そんなことっーー」
「ないって言えるか?」
何も答えられなかった。