人見知りのキリスト
「じゃあ芳江、あとは頼むぞ」



父は息子の意識の回復が合図ででもあったかのように、そそくさと病室を後にした。



――きっとお仕事に戻ったんだな。



「お父さんは仕事の鬼なのよ」と母が普段から良く口にしていたので、子供ながらに推測は出来た。


家ではゴロ寝ばかりしているヒグマが会社では角を生やした赤鬼になって吠えまくっている、そんな姿を想像した。
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