人見知りのキリスト
その時、視線が一点に釘付けになった。

入り口で制服姿の美しい女性が着飾った男女を次から次へと迎え入れている。



――間違いない、 オードリーだ!



細面の日本的な顔立ち、抜けるように通った鼻梁、長いまつげが漆黒の瞳に魅力的な影を落としている。

裏方に徹するよう黒の地味な制服を着ているのだろうが、それがかえって彼女の華やかさを演出してしまっていた。

オードリーは道を間違えたのではないか?

イベント会社のOLより女優かモデルの方が適職に思えた。

参加者の女性たちが引き立て役にまわってしまうのではないかと、いらぬ心配をしてしまうほど彼女の美貌は際立っていた。

まるで底なし沼にはまったかのように、俺の両足は地面から離れがたくなっていた。



――今更ビビッてどうする!

彼女の内面はメールのやり取りでもう分かってるはずじゃないか。
人を見た目で判断するような女性ではない!


サングラスをはずす勇気はさすがに出なかったが、少しでも話が出来ればと、俺は意を決して声を掛けた。
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