人見知りのキリスト
ここに来て再び足がすくんだ。

心臓がバクバクと脈打っているのが分かる。


今度こそ間違いなく、あのオードリーと対面するのだ。


俺は初対面の人間と会って直接話をした機会がほとんどない。

全て対外交渉は龍神がやっていたからだ。


おまけに今回は女性ときている。


推測するに、恐らく美人なのだろう。



――美しき聖職者



ますます、逃げ出したくなる。


普段は龍神のことを内心馬鹿にしていたが、
このときばかりはヤツのありがたみを痛感した。



――あいつを連れてくれば良かったか?



って、馬鹿野郎!



今さっき、澄人少年に約束したんじゃないのか。


少しでもマシな未来を用意してやると。


俺は意を決した。

清水の舞台とはこのことか。
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