人見知りのキリスト
「じゃあな!」



俺はフリスビーでも投げるように、あいつの残していった忘れ物を虚空に飛ばした。


『イナズマ仮面』が海原に向かって弧を描きながら落ちていく。


あれだけ大事にしてたモノを……あいつ、今頃はどこへやってしまったんだと大騒ぎして――。



――どこへやってしまった……だと!?



その時、言い知れぬ戦慄が全身を貫いた。



――そう言うことだったのか……。



虚空を舞い落ちていく『イナズマ仮面』こそ、ジグソーパズルの最後の一片だったのだ。


28年前、眠りから目覚めた俺は被っていたお面が無くなっていることに気付いて……それでかまくらから慌てて飛び出したんじゃないのか?


よしんば焚き火に突っ込んだとしても、お面で顔を覆っていたなら、これほどの大火傷を負わずにすんだのでは?


"泥棒だ、人殺しだ"と泣き叫ぶ澄人少年から無理やり剥ぎ取った『イナズマ仮面』。


それさえあいつに返して過去へと旅立たせてやれば……今頃!?


俺は……


俺は重大なミスを犯した!?
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