人見知りのキリスト
息子が変わり果てた姿で退院してからというもの、夫婦仲は最悪を極める一方だった。


といっても、俺は子供ながらに直感していた。



――これは夫婦喧嘩ではない、父の母に対する一方的な制裁だと。



「桐生家の大事な跡取り息子をどうしてくれるんだ!! この馬鹿野郎が!!」



父の秀人が母の芳江に怒声を叩き付けた。



「澄人はあの時、かまくらの中にいなかったのよ! ちゃんと確認したわ! 健ちゃんと雪合戦しに行くって言ってたし、凍えて帰ってくると思ったから焚き火をして待ってたの! 本当なんだってば!!」



お袋が親父に口ごたえをしたのは後にも先にも、あの時だけだったように思う。
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