人見知りのキリスト
それからというもの、親父は今まで以上に仕事の鬼と化していった。

50代半ばでついに役員昇進のチャンスが訪れたが、結局、ものには出来なかった。

一般企業に勤めたことのない俺に、晩年親父はよく言っていた。



「部長までは誰でもなれる。なれないヤツは努力が足りなかっただけだ。しかし、その先は別だ。仕事が出来る、それだけでは役員になれない」



親父は子会社の電子部品会社に飛ばされ、そこの社長、会長を歴任した。

仕事ぶりは相変わらずだったようで、鳴かず飛ばずだった会社の業績を十年で5倍に拡大してみせた。

古巣の親会社に矜持を示し面目躍如といったところなのだろうが、そこでのんびり余生を過ごそうと思っていた中高年社員たちは相当働かされはずだ。
お気の毒と言う以外ない。
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