人見知りのキリスト
軽いめまいがした。


忘れもしない。

確かにあの日、俺はサンタにグローブをお願いしていた。

父の方でもチャンと用意していたはずなのだが、結局、そのグローブが俺の手にはめられることはなかった。

こんな素顔を晒してまで野球に興じる気など全く起きなかったし、父は父で哀れな息子を慮ったのだろう、退院して家に帰ってきてからもグローブの話は一切しなかった。



目の前の少年を見て、『まさか』と『もしや』が再び頭の中でせめぎあった。


もしかしてこれは何かたち悪い悪戯なのではないか?
何らかの意図を持って、俺を欺こうとしているのでは? 


いや、こんなチビ自らが俺を騙そうと思う動機などあろうはずもない。
< 99 / 216 >

この作品をシェア

pagetop