黒猫はくしゃく
僕は悟った。

この猫は他の死んでいった猫たちのことを僕に伝えたいのだと。

「黒猫、名前は?」

「……聞いてどうする。吾輩は人間にとっての黒猫だ。皆が怯え、殺したがる。いわゆる害虫のようなものだな……」

僕は黒猫のハットを取り、頭を撫でた。

黒猫は何かを隠すようにすぐにうつむいた。

「お前、家……あるのか?」

「あるわけなかろう……今や茂みはゴミ捨て場、不法投棄された物ばかりで住処とは言えぬ。だからといって街に出れば大きな車ばかり。吾輩たちにとって、それは恐るべきもの……何匹の仲間が死んでいったことか……人間の住む場所には吾輩たちの居場所はなく、猫を捕まえる罠が仕掛けられている……ここの国は住みにくくなっていく、自然もなくなり、動物たちも……優雅に暮らすのは動物園の動物やペットとして飼われている動物のみ。他の自然の動物は撃ち殺され、保護と言う名を使って吾輩たちを排除しようとするものもいる。」

「そうか……僕の家にいてもいいよ?何もないとこだけど……お母さんとお父さんは、帰って来ること少ないけど……」

「捨てられたのか?」

「ちがうよ……ただ、主張続きらしい……本当かどうかはわからないけど……でも、生活費も入れてくれてるし、帰ってきた時にはお土産も持ってきてくれる、それは、僕のことを忘れてないってことだから」

「そなたも大変だな……吾輩の名は……はくしゃくである」

「はくしゃく?あー、はくしゃく……」

僕はちょっと笑ってしまった。

「何か文句でも あるのか?」

「ちがうよ、そのままだなと思って」

「貴様!八つ裂きにしてやる!!」

「ごめんって!!!僕の名前はおとや、漢字は音に呼ぶ。わからないでしょ」

ニコッと笑う僕をはくしゃくは鼻で笑った。

「ねこだな。音に呼ぶ。猫と読むことができるぞ」

「……あ!ほんとだ!」

「やはり、吾輩の目に狂いはなかった。」

はくしゃくは満足そうに笑っていた。
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