春風の吹く街
ー序章ー
僕は、今日もまた平凡な朝を迎えようとしていた。
部屋の窓から見える景色もいつもと変わらず、あたり一面の雪景色。部屋の温度が下がっているせいか、室内でも吐く息が白かった。
「ふぁあ・・・さむぅ・・・んーおかしいなぁ、暖房のタイマーセットし忘れてたのかなぁ」
あくびをしながらエアコンのリモコンを探し、暖房を入れ部屋が温まるのを待っていた。
部屋が温まるまでの間、僕は布団に包まって時計を確認した。
「げ、まだ6時かぁ・・・寒さで目が覚めたとはいえまだ寝てたかったなぁ」
二度寝しようにも寒さで目が覚めたため、仕方なく壁にかけていた制服に手を伸ばした。
制服に着替えた僕は、居間に行き朝食の準備を始めた。
朝のニュースを見ながら簡単な朝食を済ました頃には、いつもの登校時刻となっていた。
「さて、そろそろ行こうかな」
時計を確認した僕は、支度を終え家を出た。
「・・・いってきます」
その声には誰も答えることが無くただ静かに部屋に広がった。

部屋の窓から見てはいたが、外に出て改めて雪の多さを実感した。行き交う学生達の吐く息は白く染まり、僕も同様に白い息を吐きながら通学路を歩いていた。
しばらく歩いていると、周りの話題は寒さや雪の事から、明日からの冬休みの予定や年末のこと等を友人同士仲良く話ながら歩いていた。僕は、そんな周囲の会話を聞き流しながら一人で雪道を歩いていた。
何故一人かって?べつに僕にだって友達入るよ?ただあいつとは通学路が別なだけであって、どうせいつもの十字路で合流することになると思う。
『あいつ』とは、幼稚園からの腐れ縁&悪友の清水亮太の事だ。
僕は両親と妹を幼い頃に亡くしているのだが、両親を亡くして落ち込んでいた僕を励まし元気づけてくれたのが、亮太だった。
僕は今でもあいつの笑顔を覚えている。今の僕があるのは亮太がそばにいてくれたおかげといっても過言ではない。
そんな僕と亮太が通う私立夕凪学園は明日から長い冬休みに入る。
周りの学生達と同様に浮かれている亮太の姿が浮かんで来るが、この時の僕はまだ、これから自分の身に起こる出来事など想像できなかった。

高校二年生の冬、僕の『世界』に新しい1ページが刻まれようとしていた。

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