真っ直ぐ歩けばー星ヶ丘高校絵巻ー
「うん、そうだよ。ってか、そうらしいね。
俺たちの前じゃ、あんまりそんな素振り

は見せないから…。」


「そうなんだ?」

「うん、綾先輩が、遠野さんの家に下

宿してるから、一緒に帰ったりとかし

てるみたいだけど。あんまりラブラブっ

ていう雰囲気はないんだよなあ。」

「えっ!そのマネージャーの先輩っ
て、遠野さんと一緒に住んでんの?」


あたしが思わず目を見張ると、松永は

ポリポリとにきび面を掻きながら続けた。


「俺たちもあんまり知らないけど、そうみたい。だから付き合ってる、みたいな噂が立つのかもしれないけど。」

「…遠野さんって、モテるんでしょ?」

「そりゃあ、ね。すごい人だもん。男の俺から見ても、超かっけーよ!
すげぇ憧れだよっつーか、そんな風にはなれないけどさあ…。」


照れたように話す松永に

当たり前だろ

と内心で突っ込む。

「でも、なんつーか超越した人だからねー。モテる、とか興味ないんじゃないの?女に媚びてるとこなんか、見たことないし。」


ふーーん。


そうなんだ。


もしかしたら


もしかしたらちょっとだけ


脈はあるかもしれない。


あたしの心にちょっとだけ力が湧いた。



ありがとうと、投げつけるように言ってあたしはさっさと教室に戻った。
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