真っ直ぐ歩けばー星ヶ丘高校絵巻ー
「鷺原さんは来ませんよ。」


どうにか震えずに言えた。


足音の主が、


遠野さんが、


そこに立っていた。


遠野さんは、かすかに目を見開いたものの

あたしが待っていたことに

さして驚く様子を見せなかった。

「君か、俺を呼び出したのは。」


遠野さんは、低いかすれ気味の声で言って

あたしを見た。


着崩さない、きちんとした制服。


背筋の伸びた立ち姿。


あたしもまた遠野さんを見て


こくりと頷いた。
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