真っ直ぐ歩けばー星ヶ丘高校絵巻ー
まくし立ててから

睨むように突っ立っているあたしを見ても、

遠野さんは眉一つ動かさなかった。

両腕を軽く組んで姿勢よく立ち、

静かな表情であたしを見ていた。


格技場で見た、あの時の遠野さんのよう

に、今の彼もとても静かだった。


少しの沈黙のあと、遠野さんが

温度を感じさせない声で


「それだけか?」


と、あたしに言った。


遠野さんの、あまりの反応のなさに

あたしは二の句が継げなくなってしまう。


「それなら、もう行くぞ。」


黙ってしまったあたしに言って

遠野さんはくるりと向きを変えた。


行ってしまう。


言わなきゃ。


何か


言わなきゃ。
< 36 / 54 >

この作品をシェア

pagetop