真っ直ぐ歩けばー星ヶ丘高校絵巻ー
遠野さんが、足を止めて

ゆっくりとあたしを振り返った。


「君は…。」


言いかけて、遠野さんは口をつぐんだ。


今日、初めて遠野さんは


本当に


ほんの少しだけ


驚いたような表情を見せた。


それから、遠野さんはため息をつくように

大きく息をした。


「名前は?」


「…一年の瀬戸直子です。」


「あの貼り紙も君がやったのか?」


責めるような響きはなかった。


あたしは俯いたまま、小さく俯く。


また、少し沈黙が落ちる。
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