真っ直ぐ歩けばー星ヶ丘高校絵巻ー
「空手部のことばっかり。

…っていうか、どこ見てるのよ!?

いやらしいなあ。

…どーせ、私は貧弱な

体格ですよーだ。」


綾は、口をとがらせて足もとの小石を

蹴る。

転がっていく小石を、目で追いながら

涼がからかうような口調で言う。

「お、なんだ?もしかして、妬けた、とか?」

「何言ってるの?そんなわけないじゃん!」

半分、図星をさされて綾は、ムキになって否定した。

唇をとがらせたまま、また新たな小石を

蹴っ飛ばす綾の、白い小さな横顔を

涼はそっと盗み見る。

「あや。」

呼びかけると、彼女は「ん?」と

こちらを振り向く。

涼は、「すまなかった。」という言葉を

飲み込んだ。


俺と付き合うことが、彼女を傷つけることになる。

直子に言った、自分の言葉が頭をよぎる。


だけど


どうやったって、自分は綾を手放すこと

はできない。


どんなに彼女を傷つけることになっても

俺は、綾と別れることができない。

そうだろ?と涼は自分に問いかける。

本当に自分勝手だ、と思う。

だけど

きっと

あやも

彼女もそんな風に思ってくれているはずだ。

だから、もう悪いとは思わない。

彼女に対して、申し訳ないと思うのは

やめだ。
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