さよなら、僕の麻衣子
(muffler and morning,her)
「おはよう。」
そんなことを考えているうちに、麻衣子がマフラーに顔をうずめながら、彼女の家の玄関から出てきた。
僕と麻衣子は高校二年生の最下級生のように先輩達にこき使われるわけでもなく、最上級生のように受験までのカウントダウンに終われるわけでもない何とも言い表せられない微妙な学年である。
僕と麻衣子は毎朝、麻衣子の家の玄関で待ち合わせをし、登校することが日課なのである。
僕は麻衣子の家の最寄り駅まで電車で通学し、彼女の家の前で彼女と合流し、彼女の家から約十分の学校までの道のりをたわいもない会話をしながら歩く。
「麻衣子、今日は昨日とマフラーの種類が違うよね。どうして毎日、それの種類を変えるの?」
そう、麻衣子は一気に冷えだした一週間前から、マフラーを愛用している。
だが毎日マフラーの種類が異なるのだ。
麻衣子はやっと気付いてくれたかというような悪戯っ子のような微笑を浮かべながら、
「だってマフラーをつけるのも今年で最後になりそうじゃない。それなら、いろんな種類のマフラーを着けてみたいじゃない。」
と言った。最後というのは、彼女がよく何気なしに口にするエイプリルフールの嘘のようなあれのことだろうか。