さよなら、僕の麻衣子
「それって麻衣子がよく口にする、アイツのことなのかい?」
僕は、確信を持ちつつ彼女に聞いた。
僕が彼女の死亡予告を口にするときは、いつもアイツと呼ぶようにしている。
理由は簡単で、それを口にすると本当になりそうで怖いからだ。
彼女もそれを分かっているかのように、口元に笑みを浮かべてはいるが少しだけ不満そうに、
「そうよ。いい加減、私の死亡宣告をアイツって言うのはやめてよ。」
と言う。
そんな事を言われても、僕は所詮意気地なしの弱虫だ。
そうやっていつものように登校していると、学校に着いた。僕と麻衣子は同じクラスだ。
今のところ、二年間同じクラスで過ごしている。
クラスに着くと同時に麻衣子は、クラスメイト達に囲まれる。
麻衣子は僕に、昼休憩ねと告げ、大勢の友達と喋り始める。
僕はというと友達がいない。
校内で僕と話すのは、麻衣子のみだと言っても過言ではない。
かといって、僕はいじめられている訳ではない。
僕は昔から、人と関わる事が苦手なのだ。
この高校に入学したての頃は話しかけてくれる人もいたため、それなりに人と接していたように思う。
しかし、入学して時が経つにつれ人と関わることから疎遠になっていった。
それにしたがって、僕は周りの同級生から変人と噂されるようになっていったそうだ。
なぜあいまいな形で話したかというと、麻衣子に聞いたことであり、僕自身は麻衣子にこの事を聞くまでそう呼ばれていることを知らなかったからだ。
僕に言わせて見ると、麻衣子もそんな僕に話しかけるくらいなのだから、変人なのだろうと思うのだが。