あなたがいなければ。【短編小説】


ダダダダダダダダッ
ガラガラガラッ
バンッ!

「すみません!遅刻しました!!」

シーン

里「慧里奈?まだあと3分あるわよ。」
「…。マジで?」
里「マジよ。」
「よかったぁぁぁぁ!!」

里「大袈裟よ。」
涼「慧里奈!?」
「おはよー!ってか、私が退院したって知らないの?」
涼「知らなかった。里奈と晃しかお見舞いに行っちゃいけ無かったから。」
「そうなんだ。」

今 “こう”って言ったよね?

里「言わないわよ。めんどくさいもの。それより、私より…。」

里奈の目先が私から少しの間だけ高垣君に移り、元に戻ってくる。

里「…」
「どうしたの?」
里「何でもない。」


キーンコーンカーンコーン
ガラガラガラ

「HR始めるぞー。慧里奈はなんでそこに突っ立ってるんだ?」
「あっ。いや何でも無いです。」
「そうか。じゃあ早く席付け。」
「はーい。」
「何だか、違和感があるな。お前が静かなんて…。」
「今は頑張り所なんです。」
「そうか…。よし。出席とるぞ!赤松!」
「はい」
「上野…」




何を忘れてるんだろう
“こう”ってなんのことなんだろう。
あっ!そうだ!

「“こう”って名前の人いますか!?」
「俺。」
「えっ!?高垣君なの!?」
「あぁ。」
「そうなんだ。」


こう…
こ――晃?

そのような気がする。

キーンコーンカーンコーン

晃「で?」



晃にあだ名があったような…
無かったような…。
「おい。」

あ゛ぁぁぁぁ!

「わかんないぃぃぃ!」
「うわぁ!びっくりすんだろ!いきなり大声出すなよ!」
「ごっごめんなさい。」


ドクン ドクン

自分の心臓の音が聞こえる。


「さっきから話しかけてんのに、反応しないし…」
「えっ?そうなの?」
「あぁ。で?何で俺の名前聞いたの?」
「あっ。それは内緒!」


このやりとり…
小さい頃に…


『――君!』
『どうした?俺になんか用?』
『それは内緒!』
『何だよ。教えろよ。』
『やだ。内緒だもん。』


あだ名だけが思い出せない。

しかもこの男の子。
最近どこかで…。


「おい。教えろよ。」
「内緒!」


いつになったら思い出せるかな?


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