あなたがいなければ。【短編小説】
紹介はここまでにします。
私が“彼”と出会ったのは、私が七歳の頃。
最初会ったとき彼は……たっ君は怪我をしていた。
「いてぇ。」
それが最初に聞いた声。
「大丈夫?」
「あ゛ぁ?」
「ヒッ!」
「あぁ。わりぃ。で?」
「で?」
「だから、なんの用?」
「あっ!えっと…怪我、大丈夫?」
「あぁ。大丈夫だけど…」
「でっでも。痛そう。ちょっと待ってて!」
「…。」
「はい!足出して!」
「何すんの?」
「手当て!」
「大丈夫なんだけど…。」
「あっ!こんなに血が出てるじゃん!だめだよ!ちゃんと洗わなきゃ!早く洗いに行こう?」
今思えば、私はたっ君の話を聞いていなかった。
「おかえりー!じゃあここに座って!」
「あぁ。」
「じっとしていてね!」
「うっうん。」
しばらくして…
「出来た!はい。これで大丈夫!」
「あっ ありがと。なんでこんなに手当てがうまいの?」
「あっ。それは、お兄ちゃんが怪我したときにやってたから…」
「兄貴いるんだ。」
「うん。」
そう。私には、義理のお兄ちゃんがいる。
でも私は、嫌い。
私は両親に捨てられた。
その際に、この大金持ちの神崎さんに養子として引き取られた。
“「私の息子が妹が欲しい。と言っている。」”
そんな風に言ったそうだ。
家族が出来た。
そう思った。
嬉しかった。
なのに…。
「どうかしたか?」
「…。何でもない。」
「なら良いけど…。あのさぁ。」
「何?」
「どこに家あんの?」「家?」
「うん。」
「少しここから遠いかな?」
「じゃあ送るよ。」
「いいよ。」
「怪我の手当てしてくれたお礼として送るよ!」
「そう?ならお願いしよっかな?」
「あぁ!任せとけ!」
しばらくして…。
「着いたよ!」
「ここか?」
「うん!」
「お前金持ちなんだな!」
「うん。嫌いになった?」
「いや。逆に好きになった!」
「あっありがとう!」
私はこの日から毎日たっ君と遊ぶようになった。