あなたがいなければ。【短編小説】



チュッ


『お兄様!』
『だって騙される慧里奈が面白くて可愛かったんだもん!だから、もう一回!』

チュッ
チュッ

『止めて!』
『良いじゃん。血繋がってないんだし…』

この出来事から始まった。

その日を始めにどんどんエスカレートしていった。

すべてが…。

『慧里奈。愛してる。』
『俺だけを見ろよ。』

そんな甘い言葉も行為も言われたりやられたりもした。

“感情が無い”

そんな言葉が似合ってた。


でも耐えきれなくなって逃げ出した。

その時に会ったのがたっ君。
たっ君を見た瞬間一気に感情が溢れそうになった。

あの子なら。
たっ君なら、私を…
そう思ったんだ。


それから毎日会って遊びだしたらお兄様が狂いだした。



『毎日どこに行ってるんだよ?』
『お前は俺だけのだよ?』

付き合ってるわけではない。
兄妹なんだから…。
でもお兄様は私を束縛し始めた。


しばらくすると、
私は体力的にも精神的にもかなり限界が来ていた。

そのときに、起こったんだ。

『慧里奈!』
『…』
『ねぇ!慧里奈ってば!』

どうせろくな事じゃない。
そう思ったんだ。

だからお兄様が私に触ろうとしたとき…

『触らないで!』

そう言ってしまった。

そしたらお兄様は、

『お前。たっ君の事好きだろ?』

なんで知ってるの?


『お兄様はたっ君に何するつもりなの?』
『んーっとどうしよっかな?いっちょボコボコにするか!慧里奈に近づくなって言って!』
『止めて!』
『じゃあ、言うこと聞けよ!』
『いや!』
『お前に拒否権なんてない!』
『そんなの誰にでもある!お兄様が…』
『俺が何?』
『もしお兄様がたっ君に手を出すなら…お兄様を先に…』
『なんだよ。言ってみろよ。』
『殺してやる!』
『やれるもんならやってみろ!』

私は、たっ君が怪我したときのために持ち歩いていたハサミを取り出しお兄様に向ける。

『そんな物騒なもの持ち歩いてんなよ!』
『いいでしょ。お兄様がたっ君に手を出すなら、私が…お兄様を…。』



小学生の女の子が刃物を兄へ向ける。
だが兄は助かり女の子は…。


『うぅ。』
『えっ 慧里奈!』


バタンッ


< 29 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop