あなたがいなければ。【短編小説】
「嫌です。」
「早く!」
「いや。」
「早く。」
「い や」
「早くしろよ。」
「いやっっ!離して!」
「逃げるとどうなるか分かるよね?」
そんなの…
「分かりません!!」
そう言って猛ダッシュする。
ガチャッ!
バンッ!
逃げなきゃ…。
私が、走って走って付いた先は…
現在の時刻。
9時30分。
「何でここなんだろう…」
学校。
思い出がある懐かしの学校。
でも…
「ここの生徒じゃないんだよね。」
そう。
転校の手続きが終わっているこの学校には用がない。
しかも、今は授業中。
里奈達は、学校に始まる前に来ていた。
「名残惜しいな。」
学校が…。
「関係無い。」
はずなのに…。
体は正直で…
タ タ タ タ
前に進む。
ガチャ
キィ
バレないように…
あの場所まで行く。
コツ コツ コツ
静かな廊下に自分の足音とかすかな先生達の声。
「―――だからここはX=7になる。出来たら問題集の73ページをやれー。」
コツ コツ コツ コツ
タ タ タ タ
ガチャッ
ギィィィ。
「ここはやっぱり気持ちいいな。」
こんな事は本当はダメなんだ。
自分でも分かってる。
屋上なんて尚更。
晃君や里奈、みんなが来る可能性が高い。
だけど…
もう少しだけ。
もうちょっとだけここにいたい。
屋上に置いてある私専用のソファーに近づく。
「まだあったんだ。」
これは私が勝手に学校に持ち込んだもの。
夜に引っ越し屋さんに頼んで、やってもらった。
私はそこに腰を掛ける。
「ふわぁぁぁ」
アクビが出る。
「眠い。」
少しだけ 寝よう。
お昼に…
なる前に…
ここならお兄様に見つかる事はきっと無いから。
だから…。
こうして 眠りに付いた。