あなたがいなければ。【短編小説】



「俺が、慧里奈を守るって言ったあの日あるだろ?」
「うん。」
「あの日の次の日に慧里奈の…ここの家に、俺は来たんだ。」
「え゛!?」
「まぁ知らないだろうな。」
「いつの間に!」
「うん。しかも悪いことに不法侵入をした。」
「…」

私はどう反応していいのかわからず、ただ黙り込む。

「別に悪気があってやった訳じゃない。ただ、慧里奈を助けたかった…。だから敷地に入って、智彦さんに会おうと思った。あらゆる部屋を探したよ。そこで、慧里奈の部屋を見つけた。」
「…」
「女の子らしくない緑と茶色を基準とした、大人っぽい部屋だった。すぐに分かったよ。慧里奈の部屋だって。だって、広菜さんから撮って貰った俺と慧里奈の写真が飾ってあったから。」


その写真は今マンションの寝室と、この家の私の部屋に飾ってある。

公園にて、2人並んで笑顔の花を咲かせている写真。

多分その写真のことだ。


「ここが慧里奈の部屋なら、智彦さんの部屋も近くにある。そう思ってウロウロしてたら、ちょうど智彦さんが来たんだ。」
兄「僕もあの時はビックリしたよ。慧里奈と同い年位の子供が慧里奈の部屋の前に立ってたんだから!」
「すいませんでした。」
兄「いやぁ。大丈夫だよ。」
「はい。一目でわかりましたよ。あれが慧里奈のお兄さんだって。だから俺は言った。」
「なんて?」

お兄様ばっかり晃君との会話はズルいと思い、さり気なく聞く。

「“これ以上慧里奈に近づくな!”って。」
兄「あれ?他にも言ってたじゃないか。“これ以上近付いたら、慧里奈が傷つくから!って。」
「確かに言いましたけど…」


何なんだ?
この2人は…。

同じ事を思っていたのか、お父様と目が合う。


「とにかく!そしたら、笑われたんだよ。智彦さんに…。」
兄「そんな事あったね!」

もう!少し

「お兄様黙ってて!真剣に聞いてるんだから!」
兄「はい。」











ヤバい。
初めてお兄様に勝ったかも…!!




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