あなたがいなければ。【短編小説】

「何で俺に頼らないんだよ。」
「…」
「お前は俺に迷惑かけないようにしてるつもりでも、そっちの方が迷惑だ。」
「でも昔みたいにお兄ちゃんに…」
「あの時は、弱かった俺がいけなかったんだ。でも今は違う。」
「たっ君は悪くない。私がいけないの。私が、私が…」

ドクン
ドクン

『なにするの。』
『俺に構うな。』
『殺してやる!』
『やってみろ。』
『いっいやぁぁぁぁ!』

一気に記憶が…

「ハッ ハッ ハッ ハッ」
「大丈夫か!?」

いっ 息が…

「タスッ ハッハッハッ ケテッ ハッハッハッ」
「過呼吸か!待ってろ!救急車呼ぶから!」













ピッ ピッ ピッ ピッ

手が…
あったかい。

この暖かさ…
知ってる。


目を開けると、一面真っ白な物。

「慧里奈!」
「だれ?」
「俺だよ!」
「ごめんなさい。わからない。」

ダダダダダダ

「神崎さん目が覚めましたか!?」
「はい。」
「先生。こいつ…僕の事分からないみたいなんですけど…。」
「わかりました。検査をしましょう。」
「宜しくお願いします。」

数分後。

「どうやら、晃君の記憶だけ抜けるようです。簡単に言えば、一種の記憶喪失です。」
「はっ?」
「信じられないなら、試しましょう。」
「慧里奈さん。」
「はい。」
「お友達のお名前を言って下さい。」
「里奈。柑那。翔太。涼太。亀ちゃん。委員長。何かが…一人だけ思い出せないんです。」
「それは誰ですか?」
「えっと…。た た た …。わかりません。」
「これで分かりましたか?」
「…はい。」

この人誰だろう。
知らない人なのに、お見舞いに来てくれたのかな?

「ごめんなさい!」
「なんで?」
「わかりません。」

なんで謝ったんだろう。

「分からないけど、ありがとう。」
「…」

なんでだろう。
何かが足りない。
心の一部がストンと落ちてなくなったみたいになってる。

「今日は、もう退院しても大丈夫ですが、気を付けて下さいね。」
「はい。ありがとうございました。」



私は、高垣さん?となぜか一緒に帰り道を歩いている。

「あの…」
「何?」
「私とどんな関係ですか?」
「うーん。学校で隣の席の人…かな?」
「そうなんですか…。」

何か違うような気がする。
なにか重要な事を忘れているような…

分からない。
考えすぎると頭が痛くなる。


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