あなたがいなければ。【短編小説】
とにかく、今日は帰って休もう。
「ありがとうございました。」
「うん。」
そう言って、マンションの中に入る。
「はぁぁぁぁ。疲れた。」
病院からマンションまでがかなりあった。
あぁ
眠い。
おやすみなさい。
ジリリリリリ
ジリリリリリ
「う゛ぅぅぅ。ねーむーいー」
「早く起きろ。」
「はぁい…。」
「早くしろ。」
「…私――」
「夢見てない。」
なっ なっ なっ
「なんでいるのぉぉぉぉぉぉ!?」
「さんざん探したんだぞ。」
「いやっ。ちっ近寄らないで!!」
お兄さんが私の前に立っている。
ん?
こんな事前にもあったような…。
『ちっ近寄らないで!』
『ずっと会いたかった…』
『…』
『引っ越しした時から。』
『――もだよ。』
『は?』
『私もだよ。だけど…。』
『だけど?』
『今は会いたくなかった。』
誰の声?
1人は私の声。
もうひとりは?
「慧里奈。」
「私、大事な物忘れてるような気がする。だから思い出すまでは止めて。」
「そんなに、ソイツが大事なのか?」
「うん…。そのような気がする。」
「分かった。但し、半年後にまた来る。その時までに、何もかも済ませておけ。」
「分かった。」
「あと、ヒントね。」
「何の?」
「お前の記憶の一部。」
「一部?」
「うん。ヒントは、“こう”。」
「?誰かの名前?」
「それは、自分で考えて。」
「うん。」
「じゃあ、10月10日に迎えにくるから。」
「…分かった。」
10月10日って誰かの誕生日だったような…
思い出せない。
里奈?涼太?それとも、柑那?翔太?
誰か独りが足りない。
なんでだろう。
まぁ。考えても無理なら、学校行こう。
今何時?
…
あっ!
「なんだ!8時だ!」
…
やっ
やっ
やっ
「ヤバい!!!!!!遅刻だぁぁぁ!」