にじいろどろっぷす。
1粒目 はいいろどろっぷ。
一瞬の出来事だった。
 目の前に広がるのは、男の子のドアップ。ネクタイの色からして彼は先輩だろう。自分でもまだふわりと地に足がついていない感覚だ。それも、どうして私だったのか。


それは入学式の終盤にせまった時だった。今から、1〜2時間前だろうか。今日は、入学式。本来ならば、此処には私を含めた新1年生とそれぞれのクラスを受け持つであろう数人の教師と各各の教科を担当する講師、校長や教頭しか居ないはずなのだ。筈、というのは


「あれ、今日って登校日じゃなかったっけ?」


怠そうに頬を掻きながら、ガラリと体育館の扉を開いた彼の登場があったからだ。黒髪で制服もきちんと着こなしている。問題はピアスだ。一体、彼の耳はどうなっているんだ。3つずつ開けられた穴にはそれぞれ色の違うピアスが。この学校って確かピアス、ましてや穴を開けることは禁止だとあったはずだ。なら、入学式に突如現れたピアスをした彼は誰なんだ。周りも、戸惑いが隠せないのか、静かだった室内は彼の登場で一瞬で数多のどよめきに変わってしまった。そこに裂くような怒鳴り声が響いた。



「青葉ぁ!今日は新1年生の入学式の日だ。2年に進級したお前は休みだろう?早く、帰れ!」



吃驚したのも束の間。整列していた私達の列に割って入って怒鳴ったのは生徒指導の体育会系のような教師だった。てか、でか!私でも170弱は身長あるのに…。じゃなくて、あの先輩はどうやら、寝ぼけて明日登校するはずが今日間違ってきてしまったらしい。にしても、1つ上なんだ。てっきり3年かと思ってた。あまりにも私が彼を見続けていたためか、気付けばその問題の彼…青葉先輩も視線に気付いたのか私の方をじっと見つめ返していた。人違いかと思い、周りをきょろきょろと見回すも彼など眼中に入ってないのか、不安の表情で近くの人と話していた。少しして顔を見上げていても彼はこちらを見たままだった。
 私は、昔から無意識のうちに1つのものに集中してじっと見てしまう癖がある。人も然り。そのせいか、彼はこちらを見たままにこりと微笑んだ。もとより、顔が整っているせいか微笑まれ不覚にもドキッと胸が高鳴った。けれど、それは一瞬で消え去るのである。
なぜなら、、、、
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