2人のユウト




 家の中には、誰もいなかった。


 運が良いのか何か知らないが、テーブルの上におにぎりが置いてあったので、それを食べた。


 ふと、ソファーに雑誌が置いてあった。





 その雑誌の表紙は、姉貴だった。


 仕事に復帰したらしい。


 しかも、満面の笑みだ。




 俺はそれ以来、姉貴を見ても、何も感じなくなった。


 憎んでいるのかもわからない。


 許したのかもわからない。



 何を思っているかも、わからない。






 ある時、姉貴は俺に言って来た。


「勇都ー。あんた、小説に興味ない?」


「・・・小説?」



「そう。
実はあたしね、男性向けケータイ小説サイトに小説を投稿しているの。
でも、全然売れなくて。
だから、勇都に書いてほしいの。
きっと売れるはずだわ」



「・・・別に良いけど」



 特に断る理由もないから。





< 245 / 368 >

この作品をシェア

pagetop