2人のユウト
家の中には、誰もいなかった。
運が良いのか何か知らないが、テーブルの上におにぎりが置いてあったので、それを食べた。
ふと、ソファーに雑誌が置いてあった。
その雑誌の表紙は、姉貴だった。
仕事に復帰したらしい。
しかも、満面の笑みだ。
俺はそれ以来、姉貴を見ても、何も感じなくなった。
憎んでいるのかもわからない。
許したのかもわからない。
何を思っているかも、わからない。
ある時、姉貴は俺に言って来た。
「勇都ー。あんた、小説に興味ない?」
「・・・小説?」
「そう。
実はあたしね、男性向けケータイ小説サイトに小説を投稿しているの。
でも、全然売れなくて。
だから、勇都に書いてほしいの。
きっと売れるはずだわ」
「・・・別に良いけど」
特に断る理由もないから。