2人のユウト
「優斗!お前は何をしている!」
お父様がやってきて、思い切り頬を叩かれる。
「何妹に手をあげているのだ!
関係ない人間が、美夏に手をあげることは許されないぞ!」
お父様は散々僕を責め、お母様は気を失った美夏を抱きしめ、涙を流していた。
「何している。もう良いか?」
突然、見知らぬおじさんが来た。
「君が優斗くんかね?」
「そうですけど・・・」
「わたしは水門高広。
君の新しい父親だ。
ほら、100万」
おじさん・・・お義父さんはお父様にお金が入っているらしい黒い鞄を渡した。
中身を確認したお父様は、僕を見ないで美夏を背負ったお母様と一緒に扉の向こうへ行ってしまった。
「行こうか優斗」
「・・・はい」
結局わけのわからぬまま、僕は新葉さんの運転する車に乗り込み、水門家へ向かった。
僕はこの時、何も知らなかった。
知るわけがなかった。
彼が、お義父さんが、危険人物だと。