2人のユウト




 僕が何も言わないうちに、お義父さんは再び僕を殴った。


 時には、刃物で傷つけた。


 でも不思議なことに、涙は出なかった。




 しかし、お義父さんが満足し、解放され、部屋に戻ると。



 途端に涙腺が崩壊する。



 滝のように涙が出てきて、痛まないはずの体が悲鳴をあげた。







 しかし、水門家に仕える使用人たちは、僕を歓迎した。


 いつも長袖を着る、使用人たち。



 僕はその服装を見て、確信した。



 今まで、お義父さんのオモチャにされていたのは、彼らなんだと。



 僕が来たから、彼らはお義父さんのオモチャにされることはなくなったんだ。




 じゃあ、これからも僕が犠牲になろう。


 そうしたら、彼らを守れるから。



 僕に優しい笑顔を向け、優しい言葉をかけてくれる彼らたち。




 これが、僕の求めていた現実なんだ。






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