2人のユウト




 水門くんが誰よりも優しいから。


 彼は今まで耐え続けたんだ。





「水門くんだけ苦しむ必要はないよ」



 悪が笑って善が泣くなんて。



 そんなこと、許されるわけないよ。



 でも、それが世の中であり、現実なのかな?



 変えることは、私には無理なの?



「・・・ありがとう。
その言葉だけで、十分だよ」



「水門くん・・・」



「さ、帰りましょう?
勉強は、また今度教えますから」



「・・・うん・・・・」



 私は差し出された手を、そっと握った。


 まるで迷子の子どもを送るような感じで、水門くんは私を家まで送ってくれた。




「じゃあね水門くん。ありがとう」


「いえ。では、また明日」



 いつも通り優しく微笑んだ水門くんは、来た道を戻って行った。






< 280 / 368 >

この作品をシェア

pagetop