2人のユウト
水門くんが誰よりも優しいから。
彼は今まで耐え続けたんだ。
「水門くんだけ苦しむ必要はないよ」
悪が笑って善が泣くなんて。
そんなこと、許されるわけないよ。
でも、それが世の中であり、現実なのかな?
変えることは、私には無理なの?
「・・・ありがとう。
その言葉だけで、十分だよ」
「水門くん・・・」
「さ、帰りましょう?
勉強は、また今度教えますから」
「・・・うん・・・・」
私は差し出された手を、そっと握った。
まるで迷子の子どもを送るような感じで、水門くんは私を家まで送ってくれた。
「じゃあね水門くん。ありがとう」
「いえ。では、また明日」
いつも通り優しく微笑んだ水門くんは、来た道を戻って行った。