2人のユウト




 引っ越すというのは、美夏とのお別れも意味する。


 折角仲良くなれたのに・・・。



『嫌だよあたし。
幸菜と別れたくないっ!
あたし、今まで友達いなくて、周りの子が羨ましかった。
でも、あたしには友達なんて無理なのかなって、諦めていたの。

幸菜と会って、あたしの人生変わったんだよ。
大げさかもしれないけど、本当のことなの。
幸菜に出会えて、お兄ちゃんとも再会できて。
幸菜のお蔭で、あたし、変われた気がするの。

それなのにお別れなんて・・・。
滅多に帰って来れないだろうし、正式にあたしは舞原を継いじゃうし。
幸菜と話す時間も、ユキの本を読む時間も、お兄ちゃんにメールする時間もなくなっちゃうよ』



 美夏は涙を流しながら話していた。






 私だって、別れたくないよ・・・。


 私にだって、やっと出来た友達なのに。



 でも、引き留めることは出来ない。



 未成年の美夏に、留(とど)まることは出来ない。



 私にも、そこまでの力はない。






 私も電話越しに、涙した。


 美夏と離れたくない、と叶わない願いを願い続けながら。


 嫌だよ、と呟き続けた・・・・。







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