2人のユウト




「いただきます」



 まだ冷たい水を、一気に飲む。


 ひんやりとした水が喉を通り、上がった息が落ち着いていくのがわかる。



「それ、あげますよ。
僕、そんなに喉乾いていないので」


「良いの?ありがとう。
じゃあお金払うよ。いくら?」



「お金も結構です。
それ、僕の担任がくれたので」



「担任が?」



 確か4組の担任って、凄く厳しいんじゃないっけ?



「帰ろうと廊下を歩いていたら担任とすれ違って、くれたんです。
きっと自分の評判を上げるためでしょうね。
もらった時、校長によろしくって言ってましたから」



 ・・・水門くんは、きっとこの学校にいる限り、校長兼理事長の息子だという鎖は外れないのだろう。







「水門くん、この後暇かな?」


「暇ですけど・・・。
空港には行きませんよ?」


「えぇっ!?何でよ!」



「言ったでしょう?
僕はもう、美夏には会いません」





 ・・・見破られていたか。




< 289 / 368 >

この作品をシェア

pagetop