2人のユウト
「いただきます」
まだ冷たい水を、一気に飲む。
ひんやりとした水が喉を通り、上がった息が落ち着いていくのがわかる。
「それ、あげますよ。
僕、そんなに喉乾いていないので」
「良いの?ありがとう。
じゃあお金払うよ。いくら?」
「お金も結構です。
それ、僕の担任がくれたので」
「担任が?」
確か4組の担任って、凄く厳しいんじゃないっけ?
「帰ろうと廊下を歩いていたら担任とすれ違って、くれたんです。
きっと自分の評判を上げるためでしょうね。
もらった時、校長によろしくって言ってましたから」
・・・水門くんは、きっとこの学校にいる限り、校長兼理事長の息子だという鎖は外れないのだろう。
「水門くん、この後暇かな?」
「暇ですけど・・・。
空港には行きませんよ?」
「えぇっ!?何でよ!」
「言ったでしょう?
僕はもう、美夏には会いません」
・・・見破られていたか。