2人のユウト
後ろから、クスッと、笑い声がした。
「本当、我が儘ですね」
「うん!
最近まで気が付かなかったの。
水門くんと美夏を会わせた時に、初めて気が付いた。
私、前から両親に思ったこと言えなかった。
小説書いていることも、灯さんが言えない私の代わりに話してくれて、初めて両親は言ったの。
そもそも、この高校に入ったのも、両親に勧められたの。
昔から私、自分で決めないで、両親に任せっぱなし。
その割に私は何もしないで、言いなりなの。
でも私は我が儘なの。
本当の気持ちも言えないくせに。
ずっと、私、寂しかったって、言えなかったの。
お父さんも、お母さんも、私のこと大事に思っているのかなって不安ばかり。
だから私、小説の世界に逃げた。
現実から逃げたかった。
小説の世界の中なら、自分の我が儘、全て吐き出せるでしょう?
主人公には、私にはないもの、沢山詰めた。
私にとっては、小説を書くことも、1つの我が儘だったのかもしれないな」
言い終わった私は、立ち止まって、膝に手を当てた。
話しながらの全力疾走は、さすがに疲れるな。
「大丈夫ですか?」
「だい・・・じょう・・・ぶ。
早くしないと・・・美夏・・・行っちゃうから。
水門くんは大丈夫?」
「・・・はい」
「そう?なら行こう!」
急いで呼吸を整えて、私は再び、水門くんの手を握る。
優しい、手のぬくもりが、私の心を安定させてくれた。