2人のユウト
「―――・・・幸菜!」
人混みの中から、聞こえる声。
「・・・美夏!」
「!?お兄ちゃん」
フォーマルな衣装に身を包んだお嬢様らしい美夏は、水門くんを見て驚いたように立ち止まった。
「どうしてお兄ちゃんまで・・・」
「美夏、会いたいって思うかなって思ったの。
だから、強制連行してきちゃった」
「強制連行って・・・。
たまに凄いことやるよね、幸菜は」
「あはは・・・」
もはや、苦笑いしかできない。
「お兄ちゃん、ニュース観たの?」
「うん、観たよ」
「・・・辛くないの?
あたしに舞原を任せて」
「どうして辛いの?
僕なんかより、美夏の方が相応しいよ。
だから両親も、僕より美夏を選んだのだろう?」
いつもヘタレなイメージのあった水門くんだけど。
今日はいつもより、大人っぽく見えた。
失礼だから、本人には言わないけどね。