2人のユウト




「―――・・・幸菜!」



 人混みの中から、聞こえる声。



「・・・美夏!」



「!?お兄ちゃん」



 フォーマルな衣装に身を包んだお嬢様らしい美夏は、水門くんを見て驚いたように立ち止まった。



「どうしてお兄ちゃんまで・・・」


「美夏、会いたいって思うかなって思ったの。
だから、強制連行してきちゃった」



「強制連行って・・・。
たまに凄いことやるよね、幸菜は」



「あはは・・・」



 もはや、苦笑いしかできない。



「お兄ちゃん、ニュース観たの?」


「うん、観たよ」



「・・・辛くないの?
あたしに舞原を任せて」



「どうして辛いの?
僕なんかより、美夏の方が相応しいよ。
だから両親も、僕より美夏を選んだのだろう?」



 いつもヘタレなイメージのあった水門くんだけど。


 今日はいつもより、大人っぽく見えた。




 失礼だから、本人には言わないけどね。





< 295 / 368 >

この作品をシェア

pagetop