2人のユウト
ただ、ここで呆気なく引き下がるほど、私は女の子じゃない。
「水門くんの担任には、アメリカへ行ったと聞かされました。
アメリカへ行った理由はなんですか?」
「関係ないことだろう」
「確かにそうですね。
でも、関係なくないです。
私、水門くんに会って伝えたいことがあるんです」
「わたしには知ったこっちゃない」
「アメリカ、と聞くだけでは、留学かもしれません。
多くの方がそう想像するでしょう。
でも、私は違います。
アメリカで思いつくことがあります。
アメリカには、あの舞原財閥がこの間引っ越した場所です」
「それがどうした。
舞原は関係ないだろう」
「そうでしょうか?
舞原財閥社長令嬢・美夏さんは、優斗くんの実の妹さんです。
つまり優斗くんは、本名は水門優斗ではなく、舞原優斗なのです。
校長とは、義理の親子という関係ですよね?」
そこまで言うと、校長は書類を捲る手を止めた。
そして、眼鏡の奥の冷たい瞳で、私を睨んだ。
「どこでそれを聞いた」
「優斗くん本人からです。
私は優斗くんから全て聞きました。
校長・・・あなたが、優斗くんに暴力を振るうことも」
「・・・」
「教えてくれませんか?
どうして水門くんは突然アメリカに?
実の家と関係があるんじゃないんですか?」