君との距離、2歩分。
歩き出したオレに曲がり角の手前で聞こえた声。
それは少し掠れた、啜り泣いているような鼻声だった。
「……だって、七世が―…」
立ち止まるオレの足。
曲がり角の手前の位置から見えたシルエット。
オレの名前を呼ぶこの声、影に写るこの背丈は…
―…小、夏?
シルエットの小夏は、目元に手を当てて泣いているようで。
そんな小夏と一緒にいるのは、何も喋らない陽大で。
オレは、その光景をただ見ているだけで。
―…こんなに好きなのに。
オレと小夏の距離は一向に縮まらない。
そしていつも、小夏はオレのことで泣くんだ。
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