君との距離、2歩分。



…あの立ち方、知ってる。


あの身長も、後ろ姿も、髪型も…みんなよく見た光景。



その人は数回、周りを見渡してゆっくりと電車の中へと入っていく。



あの後ろ姿は……七世だよね?


何で周りを気にしてるの?


……まさか…私を探してくれてるの?



「―…七世!」


頭で考えるより、声が先に七世の元へ飛んでいった。



名前を呼ばれたその人は、しつこいくらい周りを見ている。



……やっぱり、七世だ。


私の表情に笑顔が戻る。



なのに………


――プルルルルル…



高い音が七世を電車の中へと連れ戻した。



……え!?


もう行っちゃうの?


まだ2時じゃないよ!



「…七世!」


諦められない私は、もう1回七世の名前を呼んだ。



お願い……気付いて…


私は後ろにいるんだよ…




.
< 318 / 327 >

この作品をシェア

pagetop