君との距離、2歩分。
…あの立ち方、知ってる。
あの身長も、後ろ姿も、髪型も…みんなよく見た光景。
その人は数回、周りを見渡してゆっくりと電車の中へと入っていく。
あの後ろ姿は……七世だよね?
何で周りを気にしてるの?
……まさか…私を探してくれてるの?
「―…七世!」
頭で考えるより、声が先に七世の元へ飛んでいった。
名前を呼ばれたその人は、しつこいくらい周りを見ている。
……やっぱり、七世だ。
私の表情に笑顔が戻る。
なのに………
――プルルルルル…
高い音が七世を電車の中へと連れ戻した。
……え!?
もう行っちゃうの?
まだ2時じゃないよ!
「…七世!」
諦められない私は、もう1回七世の名前を呼んだ。
お願い……気付いて…
私は後ろにいるんだよ…
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