君との距離、2歩分。
事の発端は十分前。
悪夢の始まりを告げたのは、オレの携帯の着信音だった。
「―…誰?」
隣で千波留ちゃんが首をかしげてオレを見る。
「…ごめん、母親だ。」
「うん!待ってるね。」
千波留ちゃんに断りを入れると、通話ボタンを押して電話に出た。
「…もしもし。何?」
「七世、突然だけどお母さんは旅行に行って来るね♪」
「はいはい。行って来れば?」
―…また始まった。
うちの母親は外に出るのが大好きな人間だ。
旅行なんて日常茶飯事だから、もう慣れてしまった。
だから今回もそうだと思ってたのに―…
「本当に?じゃあ七世は小夏ちゃんのお家でお留守番ね♪」
「―…は!?」