ぽんぽんぼん
丁度その真横にある部屋はガラス障子が少しだけ開いていて、ふとそこに目を向ける。
と、そこは畳が敷かれており、部屋の端には仏壇が置かれ、真ん中に丸いちゃぶ台という絵に書いた様な昭和の匂いを漂わせている部屋だ。
その中でも私の目が留まったのはちゃぶ台の上で。
ちゃぶ台の上にある茶色の湯飲みと、その隣に置かれた小皿に乗せられているぽん菓子。
この部屋は間違いなく、梶木君のおばあちゃんの部屋だ。
今は不在らしい梶木君のおばあちゃん。
お茶とぽん菓子がセットで置かれている光景を見ただけなのに、そこには昔に会ったあの優しいおばあちゃんが見えた気がした。
やっぱりあのおばあちゃんは、梶木君のおばあちゃんなのかもしれない。
そんな確信めいた考えを持つのは、この家にぽん菓子の匂いが充満していて、凄く落ち着くからなんだろう。
運命かも…なんて乙女的な考えをしている自分を思わず一人でふふっと笑うと、止めていた足を動かし再び歩を進め始めた。
廊下の突き当たりにある階段を上ると直ぐに部屋のドアがある。
さっき聞いた通りだとすると、この部屋が梶木君の部屋という事になる。
途端にバクバクと激しく脈打ちだす心臓。
余りの激しさに口から心臓が飛び出しそうだ。
ここを開けたら、……梶木君に会える。
右手にグッと拳を作ると、目の前のドアを2回ノックした。
返事は…、聞こえない。
そっとノブを回して顔だけを覗かせると同時に黒を基調にしてあるベッドから上半身を起こして本を読んでいたらしい梶木君とバチッと目が合った。